再生医療に用いられる
幹細胞とは?

幹細胞には、あらゆる細胞に分化する能力のある万能細胞と、限られた一定の細胞にだけ分化することができる体性幹細胞があります。詳しくご説明しましょう。

万能幹細胞

あらゆる細胞に分化する能力を持つ幹細胞です。ここでは、その代表的な2つをお示しします。

ES細胞(胚性幹細胞)

細胞源
ヒトの受精卵

ES細胞(胚性幹細胞)

ES細胞は、ヒトの受精卵が胎児になる途中で、その胚の中にある細胞を採り出し、これを培養して作成します。早期から研究が進んでいる幹細胞で、身体を構成するあらゆる細胞に分化する能力がありますが、現状では100%の確率で目的の細胞に分化させることができないため、実用化には至っていません。 わずかでも分化がうまくいかないと、それがガン化する危険性があるためです。また、本来人間の赤ちゃんになるはずだった受精卵を操作する必要性があることから、倫理的な問題も指摘されています。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)

細胞源
ヒトの体細胞

iPS細胞(人工多能性幹細胞)

iPS細胞の特徴は、すでに分化した細胞から人工的に作り出すことができる点にあります。成熟した体細胞にいくつかの遺伝子を入れて、未成熟な状態に逆戻りさせるというものです。2012年、山中伸弥氏のノーベル生理学・医学賞受賞を機に広く知られるようになりました。 治療時には、培養して分化が完了したものを身体に移殖しますが、その際の課題は、移殖可能な状態(分化が完全に止まった状態)を、いかに見極めるかです。もし移植後に分化が進むと、腫瘍を形成する恐れがあります。また、万能であるがゆえ、移植後に意図しない細胞に分化する危険性があることも大きな課題です。

体性幹細胞

限られた一定の細胞に分化する能力のある幹細胞です。今、実用化に最も近いと考えられる2つの幹細胞をご紹介しましょう。

造血幹細胞

細胞源
自己骨髄、臍帯血、末梢血など

造血幹細胞

造血幹細胞は、基本的には骨髄に存在し、採取するには大掛かりな手術を要します。ただ、特定の薬剤の投与下では、造血幹細胞が骨髄から全身の血液中に流れ出すことがあるので、これを狙って造血幹細胞を採取することも可能です。 また、赤ちゃんとお母さんを結ぶ臍帯(へそのお)と胎盤の中に含まれる臍帯血にも、造血幹細胞は存在します。治療が困難な脊椎損傷や肝機能障害などへの治療効果が期待されている幹細胞です。

脂肪由来幹細胞

細胞源
自己脂肪組織

脂肪由来幹細胞

造血幹細胞と同等の能力を持ちながら、容易に採取できるということで注目されているのが、脂肪由来幹細胞です。脂肪由来幹細胞は脂肪組織から幹細胞を抽出することで採取できます。脂肪は全身にくまなく分布するため、大量に、かつ比較的安全に採取できる点がメリットです。このため、最も実用化に近い幹細胞とも言われています。

脂肪由来幹細胞を
使った治療を見る

各幹細胞の比較

ES 細胞 iPS 細胞 体性幹細胞
由来は? 胚(受精卵が細胞
分裂したもの)から
つくられる
体細胞に遺伝子導入
してつくられる
体の中に存在する
倫理上の
問題は?
× △ ◯
特徴は? 分化能、増殖能が
高い(万能)
分化能、増殖能が
高い(万能)
分化能はあるが、
万能ではない
臨床上の
課題は?
腫瘍化やガン化の
おそれあり
腫瘍化やガン化の
おそれあり
増殖能は限定的